CAは恋と旅がお好き

現役客室乗務員の恋愛事情と旅の記録をお話しします。

CAが綴る、旅先で見た風景。vol.5 マルタ留学に行くまでの心情

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たったの3ヶ月が一生の別れのように思えた。

 

大学生の頃、語学留学をした。

  

行き先はマルタ共和国

マルタはイタリアのシチリア島の南に位置する島国で、

世界遺産の島”と言われるほど素敵な場所だ。

小さな島でありながら3つもユネスコ世界遺産に登録されている。

公用語はマルタ語と英語。

 

英語を学ぶついでに、ユーロッパ巡りもできるという打算からマルタに決めた。

留学に行くのが楽しみで仕方ない。

 

私の留学は学校のプログラムのはなく、春休みを利用した完全に個人的なものであった。

その為、手続きから出発まで代理店を通して全て1人で行った。

 

一番私を悩ませたのはトランジットだった。

 

日本からマルタへの直行便はなく、当時はイスタンブールかドバイでの乗り継ぎが必要だった。

飛行機に1人で乗ったことすらない。(これだけで緊張する)

しかも国際線。(ハードル高いなぁ)

トランジット発生。(完全にキャパオーバー)

 

初めての留学ということで、最初は楽しみと不安が半々くらいだったのに、

留学以前に、無事にマルタにたどり着けるのかという心配が過大すぎて、

私の小さな心はパンパンに張り詰めてしまった。

 

事務手続きやパッキングなどの準備を終え、

出発当日。

 

深夜フライトだった為、朝から彼氏と過ごしそのまま成田空港に送ってもらった。

 

出発時間が近づくにつれ、

なんだか行きたくなくなってきた。

これが正直な気持ちだ。

 

自分が留学したくて両親にお願いしてお金出してもらった。

準備にもたくさん時間を使った。

私の人生経験の中では、かなり大掛かりなプロジェクトだ。

でも、楽しみより不安が大きくなってきた。

色んな人に応援してもらったから、

この気持ちを誰にも言えなかった。

 

出発1週間前くらいから非常にセンシティブだった私は

彼氏に長文の手紙を書いた。

普段はお互いにさっぱりした性格だから、ポジティブな話が多い。

言葉に出さないけど、彼氏は彼氏で離れるのが寂しそうに見えた。

 

空港に到着。

忘れないうちに彼氏に手紙を渡して、

1人でチェックインと受託手荷物の手続きカウンターに向かった。

彼氏の元に戻ると目を真っ赤にしていた。

手紙はまだ読んでいない。

じゃあ何故泣いている?

「1人で行かせるのがかわいそう。一緒に行ってあげたい。」

と言われた。

泣いているところを初めて見てびっくりしたし、

彼の心情は「寂しい」じゃなくて「心配」だったんだと知った。

彼氏以上の親心みたいなものを感じ、

私も号泣した。

 

傍から見ると、一生の別れみたいな光景だった。

たった3ヶ月の留学だなんて言えない。

 

感情大爆発なまま、お別れの時間を迎えた。

 

保安検査も出国審査も、

搭乗ゲートも機内も、

涙は止まらなかった。

旅行で楽しそうな人が多い中、1人だけ泣いているから目立っていたことだろう。

結局、離陸してシートベルトサインが消えるまで

涙は止まらなかった。

 

なんで泣いているか分からない。

行きたくないからではない。

彼氏とのお別れが寂しいからでもない。

空港についてからは、もう覚悟はできていた。

でも予想外の彼氏の涙につられて、

もう訳が分からなくなってしまった。

 

当時、彼とは付き合って1年くらい。

 

パートナーへの愛を測る物差しは、

一緒に過ごした年月の長さではなく、思い出の数や濃さなのだろう。

 

この留学を通し、

出発前のことも会えない時間も、

忘れられない思い出になった。

 

私は今も、

彼と一緒にいる人生を過ごしている。

 

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